第1回:幸福とは何か? - 私たちの問いの始まり
「幸せになりたい」
誰もがそう願っています。しかし、その答えが何であるか、正確に知っている人はいるでしょうか?
私たちは、社会やメディアが提示する「幸福のイメージ」を追いかけるうちに、漠然とした不安を抱えるようになります。 「お金を稼げば幸せになれるのか?」 「夢を叶えれば、満たされるのか?」
そして、目標を達成しても、その幸福が長続きしないことに気づき、次の何かを求め始める。まるで、幻を追いかけているかのように。
この連載は、そんな終わりなき「幸福探し」から抜け出すためのものです。私たちは、「幸福とは何か?」という問いそのものを、根本から見つめ直す旅に出ます。
「幸せ」をめぐる現代のパラドックス
私たちの周りには、「幸せ」に関する情報が溢れています。 「成功者の共通点」 「幸せになるための7つの習慣」 「幸福度を上げる食べ物」
こうした情報は、あたかも「幸福」が具体的なチェックリストや方程式で手に入るものだと示唆します。しかし、情報が増えれば増えるほど、私たちは本当に自分が何を求めているのか、見失ってはいませんか?
これは、まるで目的地への行き方が書かれた地図が多すぎて、かえって道に迷ってしまうようなものです。地図を手にしても、目的地がどこかも分からなければ意味がありません。
私たちは今、「幸福」という目的地を見失いかけているのではないでしょうか。
幸福を探求する6つの羅針盤
「幸福」は、私たちが思う以上に複雑で、多面的な概念です。一つの学問や一つの考え方だけで、その全体像を捉えることはできません。
この連載では、6つの異なる分野の知見を借り、それぞれの専門分野が「幸福」をどう捉えてきたかを探求します。
-
社会学: 幸福は、社会的な環境や人間関係のネットワークによってどう形作られるのか?
-
哲学: 古代から現代まで、賢人たちは「善き生き方」と幸福の関係をどう論じてきたのか?
-
心理学: 幸福感は、心の中のどんな感情や思考から生まれるのか?
-
経済学: お金や消費は、どれほど幸福をもたらし、その限界はどこにあるのか?
-
生物学・脳科学: 幸福は、私たちの脳内で起こる化学反応に過ぎないのか?
-
文化人類学: 世界の異なる文化圏では、幸福はどのように定義され、追求されているのか?
これらの羅針盤をたどることで、私たちは「幸福」という漠然とした概念に、具体的な輪郭を与えていきます。そして、各分野が提示する「答え」を深く理解した上で、この連載の核心へと迫ります。
それは、「幸福」を外から探すのではなく、自分自身で創造するための思想です。
次回は、まず私たちの身近にある「社会」というレンズを通して、「幸福」の正体を探っていきましょう。