"掴まず、抗わず、流れとともに" 第6話
🌊 流れに従うという誤解
「流れに身を任せる」と聞くと、
多くの人は「受け身」「怠惰」「諦め」といった印象を抱きます。
しかし、それは誤解です。
流れに従うことは、
何も考えず流されることではありません。
むしろそれは、
「抗っても変えられない力の向きを見極め、
その中で最も自然に進む方向を選ぶ」
という、深い観察と柔軟な判断の結果なのです。
🌬️ 風に帆を合わせる
風に逆らって船を動かすことはできません。
しかし、風向きを読み、帆を調整すれば、
どんな方向にも進むことができる。
流れに逆らわないというのは、
風を「敵」とせず、味方に変える技術です。
現実を無理に変えようとするより、
現実の力を読み、利用するほうがはるかに強い。
そこには「従う」ことを通じて生まれる知恵があります。
🌱 無理に立ち向かわない勇気
人生には、「戦うべきでないこと」もあります。
相手の怒り、自分の過去、老い、死、社会の理不尽。
それらすべてに正面から抗おうとすれば、
心はすり減り、やがて折れてしまう。
時に必要なのは、
立ち向かう勇気より、立ち止まる勇気です。
流れに身を委ねるとは、
「もう抗うのをやめよう」と静かに決める瞬間でもあります。
💧 流れは敵ではなく、道である
流れとは、私たちを押し流す暴力ではなく、
私たちを次の場所へ運ぶ道です。
その流れの中には、
偶然の出会い、失敗、喪失、再生といった
無数の出来事が含まれています。
抗わなければ、それらの出来事も自然と結びつき、
やがて新しい方向へと導かれていきます。
🪶 結びに
「流れに逆らわないこと」は、
消極的な受け身ではなく、積極的な柔軟さです。
それは、「自分を手放すこと」で得られる自由のかたち。
そして、「変わらないこと」よりも、
「変わりながら続くこと」を選ぶ強さなのです。
掴まず、抗わず、流れとともに。
私たちはその流れの中で、ようやく呼吸を取り戻します。