"掴まず、抗わず、流れとともに" 第3話
🌑 掴むほどに失われる
私たちは、何かを「掴む」ことで安心を得ようとします。
仕事の成果、社会的な地位、人間関係、健康、そして未来。
これさえ手にできれば、これさえ握りしめれば、
生きることは揺るがなくなると信じてしまう。
しかし現実は、その逆です。
強く掴もうとするほどに不安は増し、
離れていくものに怯え、心は固く閉ざされていきます。
まるで水を両手で必死に掬おうとすればするほど、
指の隙間からこぼれ落ちていくように。
🌊 掴むことの根っこにあるもの
なぜ、私たちはそこまで「掴みたい」と願うのでしょうか。
その根っこには、「なくしてはいけない」という恐怖があります。
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人に嫌われるのが怖いから、関係を必死に掴む。
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評価を失うのが怖いから、成果を強く掴む。
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未来が不安だから、計画を硬直的に掴む。
掴むことは、恐怖の裏返しなのです。
だからこそ、どれだけ掴んでも安心は訪れません。
🌱 手を緩めるという選択
けれども、もし手を少しだけ緩めてみたらどうでしょう。
握りしめるのではなく、開いた手で触れるように関わる。
すると、掴むことでしか得られなかったはずのものが、
逆に自然に流れ込んでくることがあります。
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友人関係は「握る」より「委ねる」ことで深まる。
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成果は「執着」より「集中」から生まれる。
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未来は「固める」より「柔軟さ」から拓ける。
掴まないことで、かえって失わずにすむ。
それが「流れに身を任せる」ということの一部です。
🪶 結びに
「掴むことの苦しみ」は、誰もが日常で経験しています。
しかし、その苦しみの正体を知れば、選択肢は変わります。
掴むかわりに、触れる。
固めるかわりに、委ねる。
その小さな緩みが、硬直をほどき、流れを取り戻す始まりとなるのです。