生きづらさ" - その生の残響構造を探る 第13話
🚂 賢治の死生観と『銀河鉄道の夜』
宮沢賢治の代表作『銀河鉄道の夜』は、
死と向き合う物語として今も多くの人に読まれています。
主人公ジョバンニは、
銀河鉄道に乗り込み、
友人カンパネルラとともに星空を旅します。
しかしその旅は、単なる幻想ではなく、
「死の彼岸」への旅路として描かれています。
賢治はそこに「死とは何か」を託したのです。
🌑 死を恐れつつ、死を超えたい
賢治自身、病弱であり、妹トシを早くに亡くすなど、
死は常に身近にありました。
彼にとって死は恐怖の対象であると同時に、
人が究極的にたどり着く「救済」でもあった。
『銀河鉄道の夜』の旅路は、
死の恐怖を突き抜け、
「死の先に愛を見つけること」を描こうとした試みだったといえます。
🧩 カンパネルラの犠牲と「他者のための死」
物語のクライマックスで、
カンパネルラは川で溺れている子どもを助けようとし、
自ら命を落とします。
この場面は「死とは終わりではなく、他者のために生きる愛の証」という、
賢治の強い宗教的・倫理的感覚を映し出しています。
「自己の死」を越えて「他者への愛」に転換する。
それが、彼にとっての死の意味だったのです。
🌌 死と向き合うことで生が照らされる
賢治が『銀河鉄道の夜』で描いたのは、
死の恐ろしさではなく、
死と隣り合わせにある「生の輝き」でした。
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死があるからこそ、今の瞬間が尊い
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死が避けられないからこそ、愛の行為が輝く
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死を旅として描くことで、人は死を恐怖だけでなく受容できる
死を真正面から見据えることで、
むしろ「生きること」そのものが輝き出す。
これが、賢治の文学が今も私たちを惹きつける理由なのかもしれません。
🪶 結びに
宮沢賢治にとって死は、避けられない現実であると同時に、
「愛と救済への扉」でもありました。
『銀河鉄道の夜』は、
私たちに死を受け入れる勇気と、
その先に広がる「生の意味」を問いかけています。
📌 次回予告
第14話では、太宰治と「寄る辺なき生」をテーマに、
生に向き合う姿勢の脆さと力強さについて考えていきます。